知的障害者施設 4万ページの支援日誌
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   第3集 知的障害ミニ知識 





4万ページの支援日誌はいかがでしたか。ご批判覚悟で本当のことを書きま

した。ぜひ読んだご感想をお寄せください。

さて、文中でご紹介した多くの子どもたち 

についてご理解いただけましたでしょうか。

なかなか難しかったかと思います。そこで、

いま少し解説を加えたいと思います。さらに

詳しく学びたい方は、筆者が選んだ本とアイ

テム「今月のイチ押し」コーナーに、たくさん

の書籍等をご紹介しましたので参考にしてください。それでは、どうぞ。



第1話 知的障害 この子らは天使です
第2話 ダウン症 可愛らしい陽気者
第3話 自閉症  曲がったことが大嫌い
第4話 施設 しあわせ作りのお手伝い
第5話 法律 先の読めない福祉制度
 

第6話 絵カード 心と心をつなぐもの
第7話 サイン言語 いつでもOK!
第8話 構造化 時間と空間を演出
第9話 発作 手ばなせないヘッドギア 
第10話 排泄 とても大切なこと 


東京図書出版会 おねがい、ボクをみて!
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て!」(東京図書出版会)
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発行 東京図書出版会 定価【1300円】
ISBN978−4−86223−274−8
C0036


今月のイチ押し


●プライバシーの保護について
プライバシー保護のため、施設名や地名などが推測されるような表現は一切していません。また、掲載されているイラストは、すべて私自身が描いたものです。どうか、ご了承ください。

●A職員について
文中に必ず登場して皆さんの失笑を買っているA職員は実在しません。しかし、似たような場面は何回かありました。文中では、それらの失笑場面を反省と自戒を込めて、1人のA職員として表現しています。


【今週の筆者オススメショップ】
    


 




第1話 知的障害 この子らは天使です

1968年、静岡県に宮城まり子氏「ねむの木学園」を作りました。まだ知的障害の子どもたちのための法律が未整備だったころの話で、宮城氏は大変なご苦労をなされたようです。まだ学生だった私は、テレビに出演した宮城氏が「この子らは天使です」と言ったのを鮮明に覚えています。
 
私が施設に就職して最初に感動したできごとを紹介します。ある時、S君が友達の飴玉を盗って食べてしまいました。盗られた子どもは泣いて私に訴えます。「誰ですか?友達の飴玉盗ったのは?」と皆に訊きました。するとS君が手を挙げたのです。なぜ盗ったのか訊くと「欲しかったから」とのこと。
 
健常児と言われる普通の子どもだったら、「俺、知らねえ」と言ってとぼけるところを、S君は素直に手を挙げて告白し、その後友達に謝っています。私は怒るに怒れませんでした。感動して声が出なかったからです。
 
心が真っ白で素直で純粋・・・宮城氏が言った天使が確かにここにいました。この子たちを良くするのも悪くするのも、私たち職員次第であることの責任の重さを感じたものです。
 
知的障害とは何でしょう?実は知的障害の定義ははっきりしていません。おおまかに捉えられているのが現実です。法律的には、満18歳までに知的発達の遅れが起こり、さまざまな場面に適応できない人たちとされています。一つの目安として知能検査による知能指数というものがあります。
 
また、知的障害の病的な原因もわかっていません。遺伝であるとか、出産時の事故であるとか、乳幼児期の怪我であるとか、いろいろ言われていますが定義づけはされていません。医療では知的障害のことを精神遅滞と言っています。法的には精神薄弱という言葉が長年使われていました。
 
一般的に良く見られる知的障害の特徴を紹介します。まず、言葉の発達が遅れるということ。言葉が理解できなかったり言葉が話せないだけでなく、言葉の数が少なかったり発音も苦手だったりします。言葉のことで友達からからかわれると、ますます苦手になっていきます。だから人とのコミュニケーションや人間関係の持ち方で大変辛い思いをします。
 
また、理解したり覚えたりするのに時間がかかります。また、記憶できる量も少ないようです。だから毎日毎日の繰り返しが大切なのです。外出の時、「また、あそこへ行くんですかぁ、もう飽きました」とA職員は良く言いますが、同じ所へ何度も行くことで理解でき安心できるのです。
 
また、自分で判断することが苦手です。施設では自己選択と良く言われます。いろいろな情報を提供することで選択肢を増やし、利用者自身で決めてもらおうという考えです。
 
確かに他の障害をお持ちの方には当たり前の話ですが、知的障害の子どもさんには必ずしも当てはまらないと私は思っています。「こうする?」と訊くと「こうする」と言います。「じゃ、ああしようか?」と反対のことを言うと「うん、ああする」と答えます。周りの人の言いなりになりやすいのです。だから、職員や家族の正しい判断が必要になってきます。
 
また、相手の気持ちを察することが苦手で、自分の気持ちを素直に表現します。だから太っている友達を「デブや」とはっきり言って喧嘩になることがあります。しかし、決して悪気があって言っているのではありません。
 
まだまだ、いろいろな特徴がありますが、大切なのは知的障害の子どもさんは心が真っ白で素直な天使であるということ。その真っ白な心をさらに白くするのも、きたなく汚してしまうのも、すべて周りの職員や家族の責任であるということです。このことが理解できないA職員は、職員としては失格です。(断)

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第2話 ダウン症 可愛らしい陽気者


私が小学生のころ、同級生にちょっと変わった女の子がいました。ぽちゃっとしていて可愛らしいのですが、鼻が小さくて目尻が上がっていて、舌足らずな話し方をしていました。成績は残念ながら良くなく、頑固で良く友達と喧嘩して泣いていました。子どもとは残酷なもので、私も含めて皆でよくいじめていました。今から思い出すとダウン症の女の子だったのですね。
 
しかし、今から40年以上も前のできごとです。ダウン症の子どもが普通の小学校に登校していたことが驚かされます。当時は就学免除と言って障害児は学校に行けませんでした。就学免除とは名ばかりで、実際は就学拒否だったのです。きっと校長先生や教育委員会の深い理解があって登校できたのでしょう。
 
ダウン症は昔は蒙古症と言っていました。これは差別用語だとして、今では発見者の名前をとってダウン症と言っています。この名前通り、顔つきが当時の蒙古人に良く似ていたからと言われています。
 
顔の特徴は最近の研究でわかったらしいのですが、幼児期に顔の中心部と周辺部の成長の速度が違うからだそうです。つまり顔の中心部の成長は遅く、周辺部の成長が速いため顔が引っ張られてしまい、目尻が上がるのだそうです。また顎の発達が弱いため発音機能も落ちるそうです。他にも心臓病や目の病気にかかりやすいなどの例が報告されています。
 
原因としては染色体異常が言われています。人間の染色体は23組46本あります。そのうちの21番目の染色体に異常が出るのだそうです。しかし、なぜ21番目の染色体に異常が出るのか、それがなぜ体の障害になるのかは、わかっていません。赤ちゃん千人に1人の出現率だそうです。
 
体の柔らかさにも驚かされます。関節や筋肉がとても柔らかいのです。私のユニットに良く来ていたショートスティの子どもは、ベビーチェアーに座らせると体をのけぞらせて遊んでいました。フィギュアスケートのイナバウワーみたいで、いつ椅子から転げ落ちるかとハラハラしてました。
 
いつもニコニコしていて性格は可愛らしいです。人見知りせず、誰とでもすぐに話ができます。だから人気者になることが多く、皆に好かれます。そして何よりも音楽が大好きで、歌ったり踊ったり表情豊かです。だから音楽療法は大好きで、毎日喜んで通う子どももいました。年に一度の祭りやカラオケでは、マイクを握って離しません。
 
その反面、気持ちの切り替えが難しくて頑固な性格もあります。洗濯するとわかっていても、脱いだ服を丁寧に畳まなければいられない頑固さです。Q君は夜中に突然起きだして真っ暗な部屋の中でタンスを開けて、すべての服を畳み直すことがしばしばありました。夜勤の職員がいくら寝るよう言っても「うん」と言うだけで止めようとしません。A職員はいつもイライラしていました。
 
先日、私は町でびっくりしました。あきらかにダウン症の若者なのですが、皮ジャンを着て格好良いスポーツカーを乗り回しているのです。失礼ながら偶然顔つきがダウン症に似ているだけなのかなと思いましたが、1人でブツブツ言いながら缶コーヒーを飲んでいるところを見ると、やはりダウン症のようです。
 
ダウン症だから必ず知的障害であるとは言えないようです。自閉症も同じです。自閉症だからと言って必ず知的障害とは限りません。このことは、しっかりと覚えていて欲しいと思います。
 
ダウン症の子どもは、昔は20歳まで生きられないと言われていました。しかし、私のいた施設では還暦を迎えたダウン症の人が何人もいました。それはそれは、とても可愛らしいおじいちゃんとおばあちゃんですよ。(微笑)

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第3話 自閉症 曲がったことが大嫌い


私のいた施設は知的障害専門施設です。ですから知的障害の子どもさんがいるのは当然ですが、ダウン症や自閉症の子どももたくさんいます。症状としては三者とも知的障害なのですが、それぞれに個性があり、それを理解しないと間違った支援をすることになります。
 
たとえば、知的障害やダウン症の子どもはアバウトですが、自閉症の子どもはパーフェクト主義です。コップ一杯の水を汲むのにダウン症の子どもは溢れさせてしまいますが、自閉症の子どもは自分が決めた分量キッチリに汲みます。そのため、何度も水を足したり捨てたりして、なかなか汲み終わりません。
 
自閉症には3つの認定基準があります。つまり、強いこだわりがあり、言葉が苦手で、人間関係を嫌がります。これらのことは、「第1集/個性豊かな子どもたち」にたくさん書きましたので、もうおわかりのことと思います。
 
自閉症、昔は母原病の一つと言われていました。字の通り、母親の育て方に原因があると考えられていたのです。これはまったくの間違いですから勘違いしないでくださいね。事実、母原病という言葉はもうありません。自閉症は今では、原因ははっきりとわからないけれど生まれつきのもので、中枢神経に障害があるのではないかと言われています。
 
とにかく特徴的なのは「こだわり」です。一つの行動に固執します。それが私たちには一見無意味な行動に映るので、誤解されてしまうのです。第1集第5話のH君のように食堂に入る前に廊下で1回転するとか、I君のように同じ物が常に同じ所にないと気が済まないとか。第6話のように回転するものが好きで洗濯機をいつまでも眺めていたり、おもちゃの自動車のタイヤを指で弾いて遊んだり。また、繰り返しにも固執してドアを何度も開けたり閉めたりします。
 
またすごく潔癖症だったりもします。御飯の前の手洗いは念入りに洗っています。石鹸を何度も使っています。お風呂でも同じです。シャンプーをたっぷり使って洗髪しています。これは一見すると使いすぎでアバウトだと思われますが、彼にとっては自分が決めた分量が多いだけのことです。気に入る分量まで使わないといられないのです。
 
こうしたこだわりを私たちはセレモニーとか儀式行事とかルールとか言っていました。その行動をしなければ次の行動に移れないからです。それをしなければならないというこだわりは本人にとっては辛いものです。そのことを理解せずに叱りつけてばかりいるA職員はやはり駄目職員ですね。
 
こだわりを認めて、逆に自閉症の子どもさんのための環境設定をしてあげることが重要です。行動予測不安というものがあります。自分が次に何をすれば良いのか、何を求められているのかがわからないと不安になり、自分が理解できる行動、すなわちこだわりに走るのだと私は思っています。ですからそれを認めてあげて、構造化という決まったパターンの環境設定をしてあげるのです。
 
また、言葉と人間関係が苦手です。特に言葉は、第2集第1話のP君のように自分を追い詰める凶器になります。自閉症の子どもさんは言葉に反応してパニックになることがありますから、支援はビジュアルサイン言語や絵カードを使うようにしています。

行動予測不安について前述しましたが、絵カードを使ったスケジュールの提示は有効です。TEACCH(ティーチ)と呼ばれる療育方法がありますが、この中ではこの絵カードが大切な役割を果たしています。
 
自閉症の子どもさんは、自分で決めたルール以外のことは苦手です。まさに曲がったことは大嫌いなのです。だからルールを守れないA職員は皆に嫌われるのです。(再断)



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第4話 施設 しあわせ作りのお手伝い


私がいた施設は利用者25人で1つのユニットになっています。これは全国的に見ても平均的な規模と言えます。昔は1つのユニットに職員が8〜10人くらいいましたが、最近では5〜8人程度です。施設全体としては職員は減っていませんが、支援を充実するための部署が増え、ユニットから職員が流れて行ったためです。
 
1人の職員が4〜5人の利用者の責任担当者になります。職員は担当になった利用者のすべてのお世話をします。衣類・寝具・洗面用具はもとより、私物や金銭の管理までお手伝いします。そして、何よりも大切なのが利用者の支援計画を作ることです。
 
支援計画とは介護保険のケアプランのようなもので、1人ひとりに合った支援の方法を文書化して本人とご家族に提示して契約を結びます。これが一仕事なのです。
 
介護保険では介護支援専門員いわゆるケアマネージャーが専門に作りますが、施設では担当の職員に任せられているところが多いようです。支援計画の書式は介護保険では全国統一して決められていて、簡易なものとなっています。ところが、知的障害では書式は決められておらず、それぞれの施設の裁量に任されています。いずれは統一されるとは思いますが、私が勤めていた時はまだありませんでした。
 
とりあえず他施設が使っている書式を参考にして作ります。まずアセスメントです。アセスメントとは診断とも呼ばれ、利用者一人ひとりの現状を把握するために作るものです。これは、起床時間から食事の好き嫌い、洗面のやり方から食事の方法、歩行の様子から性格の判断、得意なことや苦手なこと、家族関係から病歴まで、何百項目もあるチェックリストのようなものです。B4版で30ページ以上もありましたか。
 
さらに、このアセスメントをもとに一年間の支援計画と具体的な支援方法を作ります。そして、半年後に中間報告書、年度末に年間評価表をもとにして作った年間報告書をご家族に提示するわけです。
 
今では支援計画と言っていますが、昔は指導計画と言っていました。どこが違うのか。これには時代背景が大きな要因となっています。昔は指導の名のもとに「できないことをできるようにすること」に主眼が置かれていたのです。ですからどうしても計画の内容が教育的・訓練的な色合いが強くなります。そして利用者ができるようになったかどうか、職員の指導方法は正しかったかどうかが問われてきます。
 
しかし、今は「できることをもっとできるようにすること」が大切と言われています。そして何よりも「施設にいて幸せかどうか」が問われるようになりました。つまり、利用者の能力を測るのではなく、利用者の生活を豊かにすることが主眼となったのです。ご家族からも、「友達や先生と仲良く楽しく生活してくれれば良い」と言われることが増えた気がします。
 
「施設は訓練所からホテルへ」とか「職員は指導員からホテルマンに」とか揶揄されるゆえんです。しかし間違ってはいないと思います。知的障害を持っていようと同じ人間として幸せになる権利はあります。ただ、利用者1人では達成できにくいので、私たち施設職員が支援というお手伝いをさせていただくということなのです。
 
そのために、何をどうお手伝いすれば幸せになれるか、ということに職員は心血を注ぎます。我が子のように、時には我が子以上に心配し考えぬきます。利用者の幸せは私たち職員の幸せでもあります。それが職員としてのやり甲斐であり誇りともなるのです。施設とはそうしたものであると信じてやみません。だから重要なのです。(礼)

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第5話 法律 先の読めない福祉制度


私は30年前に社会福祉専門の大学を出ました。当時は社会福祉という言葉自体が一般には知られていませんでした。父親に「社会福祉って何だ?」と訊かれたことを思い出します。もちろん公的資格は一つもありませんでした。その業務に就いた時に初めて名乗れる社会福祉主事とか各種の福祉司はありましたが、注目はされていませんでした。
 
それが今では福祉産業の花盛り。資格も山ほどあります。どこの施設も資格がなければ嘱託職員やパート止まりで、正職員にはなかなかなれません。私も介護支援専門員(ケアマネージャー)、福祉住環境コーディネーター、福祉用具専門相談員、福祉用具プランナーの資格を持っていて、現在は社会福祉士の勉強中です。他にも介護福祉士、介護予防運動指導員、訪問介護員(ホームヘルパー)、サービス介助士、ガイドヘルパー、精神保健福祉士などたくさんの資格がありますね。
 
福祉の制度も、知的障害に限って言えば措置制度から契約制度に、そして障害者自立支援法へと様変わりしています。障害者のための制度は、身体障害者福祉法・知的障害者福祉法・精神保健福祉法の、いわゆる障害者三法と児童福祉法がありました。この障害者三法は自立支援法に統合されてしまい、批判を買っているのはご存知の通りです。
 
さらに介護老人のための老人福祉法と老人保健法が介護保険に集約変更されていて、近い将来自立支援法と統合合体される予定と聞いています。資格制度も一部変更され、訪問介護員(ホームヘルパー)も介護福祉士に一本化されるとのことです。資格産業と言われる各種の学校や講座では、今のうちにホームヘルパーの資格を取っておくと、介護福祉士に移行する時に有利であると盛んに募集しています。それでもヘルパーや看護士は足りず、小泉首相は某国からのヘルパー受け入れを認めたとか。まさに福祉産業の花盛りです。
 
福祉制度は、確かに初めは制度の充実化が叫ばれて良い方向に向かっていました。旧厚生省も真剣に考えていてくれたと私は思っています。それが厚生労働省に変わってから雲行きが怪しくなってきました。そうです、財政負担が問題になってきたのです。真面目な福祉論議が、きな臭い財政論議に切り替わってしまいました。
 
その挙句の制度改正(改悪)の繰り返しです。その場限りの手直しばかりやっているので、今では何がなんだかわからなくなってきています。施設の担当職員は悲鳴を挙げていました。一生懸命勉強して覚えた制度がコロコロ変わるのでついていけないそうです。75歳以上の後期高齢者のための後期高齢者医療制度も、わずか数ヶ月で見直しを迫られるなど、国の施策の好い加減さばかりが目立つ今日この頃です。
 
昔は制度が簡単だったせいもあって(?)、手続きも簡単でした。親御さんも「昔は楽だったのに」と嘆いています。それが今では「何がなんやら難しくて面倒くさくて、本当に子どものためになっているのか不安になる」と言っていました。

いきおい、職員に頼ることが多くなってきたのですが、施設現場の職員は制度のことは正直あまりわかりません。毎日毎日の子どもたちの生活に奮闘しているからです。食事・洗濯・掃除・洗面・排泄・入浴・外出・余暇活動・職能訓練・機能訓練・通院・投薬・就寝・記録・・・仕事の多さは絶品です。制度どころではないのです。毎日の生活を守ることで手一杯なのです。
 
だから「制度のことは担当の課員がすれば良い。経営のことは施設長がすれば良い。労働問題は労働組合がすれば良い。」これが、施設現場の職員の偽らない声だと思います。私は現場の職員を責めているのではありません。憂いているのです。(…)

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第6話 絵カード 心と心をつなぐもの


知的障害、特に自閉症の子どもさんにとって絵カードの利用が有効であることは何度も書きましたね。行動予測不安というものがあります。自分が次に何をすれば良いのか、何を求められているのかがわからないと不安になり、自分が理解できる行動すなわち「こだわり」に走るのだと私は思っています。ですからそれを認めてあげて、構造化という決まったパターンの環境設定をしてあげるわけです。その一つの方法が絵カードです。
 
自閉症の子どもさんはコミュニケーションが苦手です。私たちは言葉でコミュニケーションをしますが、言葉が苦手な自閉症の子どもさんは言葉を嫌います。私たちも外国語で話しかけられると不安になりますね。それと一緒かもしれません。時には叱られているように感じることもあり、イライラします。自閉症の子どもさんはパニックになることもありますので、優しい話し方や注意が必要です。
 
自閉症の子どもさんは、言葉は苦手でも視覚的な能力には長けています。ですから絵カードという目で見て理解するアイテムが有効なのです。TEACCH(ティーチ)という療育方法では、この絵カードが大切な役割を果たしています。一日の予定や行動を一枚一枚の絵カードにして提示するわけです。TEACCHについては佐々木正美氏の書籍が詳しいので読んでみてください。
 
歯磨きはハブラシの絵カード、朝食は御飯の絵カード、登校は学校の絵カード、勉強は教科書の絵カード、といった具合に一枚一枚の絵カードにします。それを時間経過順に並べて提示し、上から一枚取っては実行し、終わった絵カードは元に戻して次の絵カードを取って実行していくのです。
 
これにより、今日は何をしたら良いのか、次は何をするのかが良くわかり不安になることなく落ち着いて取り組めるのです。この絵カードの提示方法は親御さんや職員からのコミュニケーションアプローチですが、逆の方法もあります。つまり自閉症の子どもさんが絵カードを提示するのです。
 
子どもにとって必要な物や要求などを何枚もの絵カードにして常に持っています。喉が渇いて水が欲しくなったらコップの絵カード、トイレに行きたくなったら便器の絵カード。このような絵カードを持ち歩き、必要になったら親御さんや職員に見せるわけです。
 
私も30年間いろいろな場面で絵カードを活用してきました。ユニットで生活する子どもたちは起床すると、まず今日の日程表を見に来ます。午前中は色々な班に分かれて職能訓練や生活訓練を受けます。そこでも絵カードによるタイムスケジュールが提示されます。これは午前中だけの日程表で班ごとに違います。子どもたちが自分の席に着くと、そこにも絵カードが並べてあります。今からこの子どもが行う訓練内容のタイムスケジュールです。これは一人一人違います。このように次第に細かく内容が提示されていくわけです。
 
また最近ではPECSという、絵カードを使って子どもと直接会話する方法も考えられています。インターネットにおけるチャットのようなものでしょうか。
 
ところで、一日の流れを事前に示すタイムスケジュールとは違い、子どもから示される要求の絵カードはリアルタイムです。すぐに出せなければ意味がありません。突然トイレに行きたくなった子どもが、慌てているためポケットから絵カードを取り出せず、お漏らししてしまったことがありました。これでは絵カードは役に立ちません。
 
何かをしていて、側に絵カードがない時も困ります。その時、私たちはサイン言語を使いました。サイン言語とは一種のジェスチャーや手話のようなものです。(続く)

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第7話 サイン言語 いつでもOK!


小さい子どもさんが言葉よりも先に覚える仕草は、手の平を重ねて「ちょうだい」をすることですね。次に頭を下げて「ありがとう」を親御さんは教えます。これは直ぐに覚えます。言葉よりも視覚的なジェスチャーは連想が容易で、小さい子どもさんでも理解できるからです。
 
言葉の苦手な自閉症の子どもさんも同じです。一緒に暮らしていると、自然に覚えるジェスチャーがいくつもあります。その代表的なものが「おしっこサイン」です。自分のチンチンの辺りを手で軽く叩くジェスチャーです。前話でも紹介したように、子どもたちはギリギリまでおしっこを我慢してしまいます。切羽詰った状況で必死に訴える時、落ち着いて絵カードを出すことなどできません。直感的にチンチンを叩いて知らせるわけです。
 
このように子どもからの意思表示は、瞬間的に行われるリアルタイムなものが多いのが特徴です。親御さんや職員が時間をかけて用意するタイムスケジュールのようにはいきません。また、親御さんや職員からの意思表示も、今その瞬間に提示しなければならない時があります。子どもがしてはならないことを今まさにしようとした時には瞬間的に「ダメ!」と意思表示しなければなりません。後から叱っても、子どもは何を叱られているのか理解できないからです。ですから、このような時には絵カードよりもジェスチャーの方が有効と言えます。
 
この意思表示のためのジェスチャーは以前からありました。1979年、国立特殊教育研究所東正氏「ことばのない子のことばの指導」にサイン言語試案が発表されていました。また、東京の旭出学園には日本マカトン協会があり、1989年に日本版マカトンサイン330種の線画集が発行されました。神奈川県の弘済学園では、独自に作ったジェスチャーを228枚の絵カードにまとめて1988年に「発達障害児者のサインカード集」として実践し発売していました。

知的障害者のためのサイン言語は未だ統一されていません。それはなぜだかわかりませんが、施設現場や子どもさんの実情に合わせるのが難しく、まだまだ研究の必要があるからではないでしょうか。
 
とりあえずは、既成のサイン言語を参考にして各現場で取り組むことが必要です。だから私も自分のユニットだけでも実践しようと他の職員を説得し、マニュアルを作り始めました。最初は他のサイン言語のように何十何百と考えては子どもたちに提示しました。それはもう大量生産でした。子どもたちが目を丸くしていたのを覚えています。
 
例えば御飯のサインは、左手でお茶碗の形を作って右手で箸のように口に運ぶ形です。また、お勉強は、本を広げるように両手を左右に広げる形。お仕事は、握り締めた左手を握り締めた右手で金槌のように叩く形、などなど何十何百と作り出しました。しかし約10年間の試行の末に今も使われているのは僅かに40種だけです。40種あれば生活するのには充分であると思われます。

サイン言語の効果は抜群でした。特に子どもたちの表情に変化が現れてきました。自分の思いが簡単なジェスチャーで親御さんや職員に伝わるのです。それまで自分の意思が伝えられなくてイライラしていたのが、すっきり解消されたからです。絵カードのような面倒さもなく、すぐに提示できるサイン言語は歓迎されました。
 
私はサイン言語だけを推奨しているものではありません。絵カードとの両立が大切であることは理解しています。また最近ではシンボルマークパソコンを使ってのコミュニケーションの方法も提唱されています。しかし、私はそれでもサイン言語の有効性を信じている一人です。(礼)

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第8話 構造化 時間と空間を演出


知的障害の子どもたち、特に自閉症の子どもたちの療育にTEACCHが有効なのは良く知られたことですね。すでにご紹介した、絵カードを使って意思疎通することもTEACCHでは重要な方法とされています。
 
TEACCHのもう1つの大きな特徴が構造化と言われるものです。構造化とは簡単に言えば、子どもを取り巻く時間と空間を一定にすることです。
 
では時間を一定にするとはどういうことでしょう。簡単に言えば時間割表を作ると言うことです。学校の時間割だと、1時限目が国語で2時限目が算数、3時限目が社会で4時限目が体育、それが終われば給食で昼休み。と言ったように一日の流れが曜日によって一定になっていますね。
 
知的障害の子どもたちの時間割表は、大きなものとして一日の流れが一定にされています。小さなものとしては学習や作業の流れが一定にされています。さらに小さなものとしては本の出し方や工具の使い方も一定です。
 
朝起きたらまずトイレに行きます。トイレから出たら手を洗い、部屋に戻って着替えます。次に食堂に集まって食事をし、洗面所へ行って歯を磨き顔を洗います。と言ったように生活の流れを一定にします。その一つ一つの行程を絵カードにして一定の場所に貼っておくのです。子どもたちはその絵カードを一枚ずつとっては確認して行動します。
 
学習の場面でしたら、ご挨拶をしてから最初の課題を取ってきて学びます。終わったら二つ目の課題をします。それも終わったら休憩します。時間が来たら三つ目の課題に挑戦します。これも一つ一つを絵カードにして一定の場所に貼っておき、子どもたちは一枚ずつとっては確認して課題に取り組むのです。
 
このように時間の流れを一定にすることにより、行動予測不安が解消されるのです。行動予測不安とは、今自分が何を求められているのか次に何をすべきなのかが理解できずに不安になることですね。ですから自分の理解できる行動に固執するのです。それがこだわりだと私は思っています。
 
空間を一定にするとはどういうことでしょう。これは決められた場所に決められた物が必ずあるということです。自分が課題に取り組む机が決められた所にあり、自分が取り組む教材も決められた所に片付けてあるということですね。これにより、子どもたちは迷うことなく自分の課題を自分の机に持って来られるわけです。
 
それが時間割や課題や場所が毎日のように変わると、子どもたちは理解できずに不安になります。そしてパニックを起こして出て行ったり興奮したりします。挙句には明日から教室に来なくなることもあります。変化が苦手なのです。
 
実は子どもたちの一見理解できない行動のこだわりも構造化なのです。それは子どもが自分で一定にした行動だからです。教室や食堂に入る前に入口で1回転したり、作業場に行くのにわざわざ遠回りしたりすることに固執するのは、それが自分で決めた構造化だから理解できるのです。
 
ですから職員や大人が決めた構造化には最初は抵抗を示すことが多いです。しかし、一度納得すると素直に行動できるようになります。これによって不安がなくなり、落ち着いて課題や作業に取り組めるようになるのです。
 
この構造化が知的障害の子どもたち、特に強いこだわりをもっている自閉症の子どもたちに有効であることがTEACCHにうたわれているわけです。
 
気の向くままに感情がコロコロと変化してしまうA職員は、だから子どもたちに疎まれるのです。いやいや子どもだけでなく私たちも敬遠してしまいます。わかっているのかなぁ、あの人。(笑)

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今月のイチ押し



第9話 発作 手ばなせないヘッドギア


施設には毎年、福祉を学ぶ高校生や大学生などがたくさん実習に来られます。学生にとっては貴重な実習体験ですので、私たちも大切に対応しています。特に注意をはらうのが、学生に疑問や不審を抱かせないことです。職員が行なっていることが拘束とか虐待とかに誤って見られることが多々あるからです。
 
ある日突然やって来て僅かの時間覗き見ただけでは本当のことは、なかなかわかりません。なぜそうしているのか、理由を説明することが大切です。利用者と保護者そして職員との長い歴史の中で次第にそうなってきたことを丁寧に説明します。すると大抵の実習生が納得してくれ、福祉の仕事の大切さや大変さを理解してくれます。
 
しかし、常にポーカーフェイスで何を考えているのかわからない学生さんだと、私たち職員は何を説明して良いのかわかりません。だから質問攻めしてくれる学生さんの方が私たちには指導しやすいと言えます。
 
良く質問されることに「あの人はなぜ、変な帽子をかぶっているのですか?」というのがあります。それは一部の利用者さんがかぶっているヘッドギアのことです。ボクシングやラグビーの選手がかぶっている頭部を怪我から守るための特殊な帽子です。
 
昔は動物の皮でできていて硬くて黒いものが主でしたが、最近は赤やらオレンジ色をした柔らかい布製のものが出てきて大変オシャレになりました。このヘッドギアをかぶっている利用者さんは頻繁に癲癇(てんかん)発作を起こす人たちです。
 
てんかん発作は、脳細胞のネットワークの中で突然過剰な放電が起きて、一時的に意識を失ったり痙攣したりする病気です。いろいろな発作形態がありますが、良く言われる大発作ですと激しい全身痙攣で転倒してしまいます。その時身体が硬直したまま転倒すると頭部が床に叩きつけられてしまいます。すると脳出血などの二次的な疾患が起きる危険があるためヘッドギアをかぶってもらいます。
 
多くの発作は突然起こります。起きた次の瞬間には転倒しています。職員が転倒を防ぐことは不可能と言えます。発作は大抵数分で収まり意識も戻りますが、転倒して床に頭部や顎を打ちつけて裂傷してしまい、病院で縫合することもあります。
 
普段から発作を抑える薬を服用していますが、それでも発作は起きてしまいます。なぜ、知的障害の子どもたちに発作が多いのかは、はっきりしていません。しかし普通の人の中にも発作を起こす人はいます。古くはソクラテスやナポレオン、近くは旧ソ連のレーニンやシンガーソングライターのニール・ヤングなどが発作で苦しまれたと言われています。
 
発作は数分で収まりますが、しばらくはボーっとしていることがありますので注意して見守ってください。しかし5分10分経っても痙攣が治まらない重責発作でしたら迷わず救急車を呼んでください。これは命にかかわることになります。
 
昔は狐憑きとか言われて恐れられ、時には差別や虐待の対象になった時代もありました。しかしこれは病気ですので、本人に非はありません。誤った知識は悲劇を生むだけです。そのことを私たちは学生さんに心を込めて話します。
 
実習に来た学生さんには、いつもこのように説明しています。そして「怖がらないでくださいね。一番辛いのは本人ですから、優しくしてあげてくださいね」と言います。すると大抵の学生さんはニッコリ笑ってくれます。
 
次々とやって来る実習生を「学生が側にいたら監視されているみたいで、さぼれないじゃないの!」と不満タラタラのA職員は実習生が大嫌いです。自然と顔が不機嫌になってきますから、学生さんからも敬遠されてしまいます。困ったものです。(ハァ)

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第10話 排泄 とても大切なこと


施設支援の五本柱と言うものがあります。それは食事・排泄・入浴・睡眠・余暇の五つです。前者四つは身体の健康、最後の余暇は心の健康に大切なものです。どれも重要ですが、私は特に排泄にこだわりました。なぜなら、他人が嫌がる支援だからです。
 
排泄の支援とは、利用者である子どもたちに正しく気持ち良くトイレで排泄してもらえるようにお手伝いすることばかりではありません。私がいたユニットは最重度と呼ばれる子どもたちがたくさんいました。この子たちはトイレでの排泄よりも、着衣の下での失尿や失便の方が多いのです。
 
ユニット中に香ばしい臭いが漂います。職員は手分けして臭いの出所をさがします。すると、ある子どもの身体から臭いがしているのがわかりました。さっそく「ごめんね、ちょっと見せてね」と声掛けしてからパンツの中を覗きます。本人は言葉を理解できませんから職員の言いなりです。案の定パンツの中にはウンチがいっぱいありました。それも下痢気味の軟らかいウンチです。
 
さっそく他の職員の応援を求めてバスルームに直行です。1人が服を脱がせてシャワーで身体をきれいに洗います。その間にもう1人がウンチで汚れた衣類を洗濯します。さらにもう1人が乾いた着替えやタオルを持ってきます。それはそれは大騒動です。
 
この子のように自分で立っていられる利用者さんは洗体するのも容易ですが、車椅子に乗っている子どもや身体にマヒのある子どもさんの洗体は大変です。そのまま入浴になってしまいます。
 
特に起床時の夜尿や失便のお世話は大変です。ベットに寝たまま失便されると、いかに紙オムツでガードしていても、ウンチがはみ出て背中からうなじにかけてベッタリと汚れてしまうのです。職員がたくさんいる日中なら応援も頼めますが、私がいた施設では夜勤者1人でお世話していました。
 
そんなある朝、10人同時に失便されて悲鳴を上げたことがありました。私はパニックです。まだ、朝早い時間です。暖房もまだ入らずシャワーも冷水しか出ません。これは、かなり昔の話です。当時はまだ、今のような24時間冷暖房できる設備は、どこの施設にもありませんでした。冷暖房がないのが当たり前の時代でしたが、今だったら人権蹂躙です。パニックが怒りに変わっていくのを感じていました。
 
急いで湯を沸かして蒸しタオルをたくさん用意します。そして、それ以上身体が汚れないように慎重に衣類を脱がせます。脱がせては身体を湯で洗い、蒸しタオルで拭き取ります。そして乾いた衣類を着せます。目が覚めてしまった子どもは起きたがるので車椅子に移乗させます。子ども一人にかかる時間は約10分から15分です。この時は早出の職員が来るまでの2時間、孤軍奮闘の戦争状態でした。
 
私は朝礼の申し送りで、このことを他の職員たちに報告しました。すると若い職員から、下痢止め薬を飲んでもらったらどうかという提案が出されました。もちろん冗談で言ったのでしょうけど、これはとても危険な発言です。さっそく説いて聞かせます。
 
排便があってこそ健康なのです。排便がなかったら命にかかわります。だから、たとえ失便であっても、排便があったことを喜ばなければいけないのです。失便のお世話は施設職員として当たり前の仕事であり、誇りを持たなければいけないのです。などと私は熱弁をふるってしまいました。
 
そんな中、またもや香ばしい臭いがしてきます。見るとA職員が「臭いわねえ、ウンチはトイレでするんでしょう!」と子どもを激しく叱りながら服を脱がしています。私はそれを見かねて「ウンチが出て良かったね、と言おうよ」と言うと、すさまじい形相でにらみつけられました。お〜怖。(退散)


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