知的障害者施設 4万ページの支援日誌
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個性豊かな子どもたち
そして悩める職員たち







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ついにアップしました!ジャンケンを使わないレクリエーションゲームをたくさんたくさん紹介しています。ぜひ参考にしてください。







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鍵つきトイレットペーパーホルダー/菜の花工房

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 第1集 個性豊かな子どもたち 





このサイトは学問書ではありません。生の子どもたちの姿を通して知的障害

や自閉症を理解していただくのが目的で

す。ですから小細工なし。4万ページの支

援日誌の中から、おもしろおかしいエピソ

ードをたくさんご紹介します。読み進めるう

ちに「なるほどな」と、ご理解いただければ

幸いです。では、どうぞご覧ください。



第1話 100円 これ何て読むの?
第2話 かさむ修理代 トイレットペーパー
第3話 加減が苦手 オールインワン
第4話 グリコが命 100円で買える幸せ

第5話 百花繚乱 こだわりの花
 

第6話 ラジカセが友達 クルクルまわれ
第7話 自由時間 悪魔の時間
第8話 箒でホッケー お掃除が苦手
第9話 ゴミは宝 コレクションと収集癖

第10話 言葉は嫌い サイン言語


東京図書出版会 おねがい、ボクをみて!
★この続きは、ただ今発売中の「おねがい、ボクをみ

て!」(東京図書出版会)
で、お楽しみ下さい。 当サイ

ト掲載分に大幅追加して全75話収録しています。読み

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発行 東京図書出版会 定価【1300円】
ISBN978−4−86223−274−8
C0036


今月のイチ押し


●プライバシーの保護について
プライバシー保護のため、施設名や地名などが推測されるような表現は一切していません。また、掲載されているイラストは、すべて私自身が描いたものです。どうか、ご了承ください。

●A職員について
文中に必ず登場して皆さんの失笑を買っているA職員は実在しません。しかし、似たような場面は何回かありました。文中では、それらの失笑場面を反省と自戒を込めて、1人のA職員として表現しています。


【今週の筆者オススメショップ】
    


 




第1話 100円 これ何て読むの?

一体どうしたの?「100円」皆さんは、これをどう読みますか?「ひゃく円」ですか?いえいえ、これは「じゅうじゅう円」と読むのです。えっ、どうしてだって?まずは私の話を聞いてください。

ことの起こりは子どもたちの金銭学習でした。知的障害や自閉症でも、年長で比較的軽度の子どもたちは将来社会復帰するために、さまざまな生活場面の訓練をします。自分で食事を作ったり、洗濯や掃除をしたりして、1人暮らしができるように練習するわけです。その中の一つが買い物訓練に必要な金銭学習というわけです。

軽度の子どもさんと言えども、数の勉強はやはり苦手なようです。数を数えるのも「いち、に、さん、し、・・・」と始めて、百までできれば大喝采です。しかし、お金の数え方となるとわからなくなるようです。何がわからないのかが、職員はわからない。ためしにA君に10円玉を10個渡して数えてもらいました。

「じゅう円、にじゅう円、さんじゅう円・・・」順調です。ところが「はちじゅう円、きゅうじゅう円、じゅうじゅう円・・・」え?自分の耳を疑いました。もう一度数えてもらっても最後はやはり「じゅうじゅう円」でした。それではと10円玉を20個渡してみたら「じゅうじゅう円、じゅういちじゅう円、じゅうにじゅう円・・・」!

皆さんはわかりましたか?彼は10円はわかります。10円玉が2個あれば20円です。3個あれば30円です。そうです。「じゅうえん」の言葉の最初に個数の数字をつけて言っていたのです。だから、10円玉が10個あれば「じゅう・じゅう円」、11個あれば「じゅういち・じゅう円」なのです。

数字を読む時は99、100、101が「きゅうじゅうきゅう、ひゃ〜く、ひゃくいち・・・」と言えるのに、硬貨のお金を見ながら数えると「きゅう・じゅう・きゅう・いち円、じゅう・じゅう円、じゅう・じゅう・いち円・・・」となってしまうのです。数の数え方は、私たちが子どものころ九九算を覚えさせられたのと同じで丸覚えなんですね。2×2がなぜ「ににんがし」なのか理屈は後回し。とにかく覚えろと言われました。

知的障害や自閉症の子どもたちも同じで、数の数え方は丸覚えなのです。それが、現物の硬貨を数える時になると、そのルールが違ってきてわからなくなるのですね。目に見える1円玉、10円玉、100円玉にとらわれてしまうのです。1円玉が10個なら「じゅう・いち円」、11個だと「じゅういち・いち円」となってしまうのです。だから、5円玉や50円玉なんか出してきたら、もうパニックです。

新しいことは、なかなか覚えられない子どもたち。でも一度覚えてしまうと元来の固執性からか、今度は修正や応用ができないのです。それを理解してあげることが大事なんです。 それが理解できないA職員は「こんな簡単なこともわからないの?」と、子どもたちを叱ってしまいます。これは子どものせいではないです。やはり教えた職員に問題がありますね。

だから、私はすぐに金銭学習を止めました。というより諦めました。以後は、硬貨ではなく紙幣を持って店に行き、忘れずにお釣りをもらってくるという行動を訓練しました。

自動販売機もそうです。とりあえず、いくつか硬貨を入れてボタンを押しても缶コーヒーが出てこなかったら、出てくるまで硬貨を入れることを教えました。そして、お釣りを忘れずに取って帰る。これでなんとかなるもんです。(笑)

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今月のイチ押し



第2話 かさむ修理代 トイレットペーパー

いけね、またやっちゃった!知的障害者施設には縦に長い特殊な洋式便器があります。体の不自由な人でも座りやすいとか、利用者が座ったままでも介助する人がお尻を拭いてあげやすいとか言われています。古い病院などでも見かけますが、最近は減っています。もうメーカーも作っていないらしく、割れたりして壊れると今風の便器に交換です。

その便器にトイレットペーパーを詰める子どもがいます。拭きすぎて多量のトイレットペーパーを使用して詰まっただけなら、例の詰まり取り用のポンプでスッポンスッポンとやればなんとか開通します。しかし、ペーパーホルダーからトイレットペーパーを丸ごと外して便器に突っ込む子がいるのです。

ご存知のようにトイレットペーパーはカラカラと巻き取って捨てると、水に良く溶けて流れてくれますね。しかし、丸ごと水に浸けると紙が溶け合ってくっついてしまい、まるで紙粘土のようになってしまうのです。

まだ新品の大きなトイレットペーパーだったら、便器の溜まり水にプカリと浮いていて助かるのですが、ある程度使ってあるトイレットペーパーだと細くなっていて流れてしまいます。それが便器下のUの字の所に引っかかってパイプを詰まらせてしまうわけです。

子どもたちがすぐに知らせてくれれば使えないように封鎖できるのですが、そうとは知らずに次の子が使用すると、水と便尿がトイレ一杯に溢れてしまうことになります。ここでまた、A職員の悲鳴が聞こえてくるわけです。「また詰まってる!一体、誰がしたの!」と。

さあ、皆さんはどう考えますか?子どもは、なぜトイレットペーパーを丸ごと便器に詰めてしまうのでしょうか?諸説あると思いますが、一つには「お尻を拭いたトイレットペーパーは便器に捨てる」と教わったことが、いつのまにか「トイレットペーパーは便器に捨てる」になったのではないかと言う説です。「お尻を拭いた」の部分がいつのまにか頭から消えてしまうのです。

知的障害や自閉症を持った子どもさんは、二語文が苦手と言われます。だから話し言葉も「昨日、カラオケへ行って歌ったよ」というのが、「昨日」「カラオケ」「歌った」と、一言一言話す子が多いようです。

また、一度に二つ以上のことをするのが苦手とも言われています。「食堂へ行って、窓を開けて、テーブルを拭いて」とお願いすると、窓を開けただけで帰って来てしまうことがあります。 それと同じで「お尻を拭いたトイレットペーパーは便器に捨てる」が「トイレットペーパーは便器に捨てる」ものとなったのではないかと言うことです。だとしたら、最後まで正しく教えなかった職員が悪いということになりますよね。それが理解できないA職員は「どうしてイタズラばかりするの!」と子どもを叱りつけてしまうのです。

トイレットペーパーをカラカラと引き出す量にも問題があります。次の第3話で紹介するように、知的障害の子どもたちは加減が苦手です。だから、カラカラカラカラカラカラカラと、たくさん引き出すことがあります。

最近では某メーカーが決まった量だけしか出てこないトイレットペーパーホルダーを販売しています。私も、トイレットペーパーホルダーからトイレットペーパーを丸ごと外せない鍵つきトイレットペーパーホルダーを考案し、【ふくい菜の花工房】にて手作りで販売しています。障害者施設はもちろん、老人施設や精神病院からも声がかかります。変わったところでは、キャンプ場や寺院からも声がかかります。トイレットペーパーを持ち去られて困っているそうです。

さてさて、詰まったトイレはどうするのでしょう。プロの業者にお願いして直してもらいますが、修理代が高くて別の悲鳴が聞こえそうです。(笑)

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第3話 加減が苦手 オールインワン

キャーキャー!私が見てきた多くの施設の食堂には、何故かテーブルの上に調味料のお盆がありませんでした。醤油やソース、割り箸や爪楊枝などがセットになっているお盆です。何故ないのでしょうか。実は、こんなことがあるからです。

ある日、トンカツが出たのでソース瓶をテーブルに置いてみました。ユニットの子どもたち25人がかけても余るほどの量です。しかし、じきに大騒ぎになりました。「A先生、Bちゃんが全部かけちゃった!」と悲鳴が挙がったのです。

そうです、Bちゃんがソース一瓶全部を自分のトンカツにかけちゃったのです。しかも、それを美味しそうに食べているのです!口のまわりだけでなく、顔中ソースだらけにして食べているのです。それはそれは幸せそうな顔をして。

知的障害の子どもたちは加減が苦手です。量や力の加減など、抽象的なことが苦手です。いわゆる「好い加減」が「いいかげん」なのです。それに対して自閉症の子どもは、量などに対しては激しいこだわりがあります。

こんな子もいます。ソース、あればあるだけ全部かけてしまう。ご飯、あればあるだけ全部食べてしまう。お茶も、あればあるだけ全部飲んでしまう。このことを理解しないA職員は「本当に困ったわねぇ!」と目くじらを立ててしまうのです。

だから、瓶ではなく1人1個ずつの小さなパックが便利なのです。昔、学校の給食に良く出たマーガリンやジャムの小さな袋。5gとか10g入りとかがありましたね。今では、コンビニの弁当に醤油やソース、サラダのパックにはマヨネーズやドレッシングの小袋がついています。1人1個、間違いなく適切な量が入っているのです。

別の日に、こんなこともありました。私はドリンク・バイキングを思いついたのです。テーブル一杯に、インスタントコーヒーや紅茶、ココアや抹茶、スープや汁粉などを並べ、好きなものを自分で作って楽しもうという企画です。もちろん、おかわり自由です。

ところが、B君はなんと一つのコップにコーヒー、紅茶、ココア、抹茶、スープの素などを全部入れて湯を注いでいるではありませんか!こちらでは、C君がコップ一杯のコーヒーにクリープを一瓶入れて溢れさせているではないですか!また、D君は砂糖の瓶に湯を注いでいるではないですか!ここでまた、このことが理解できないA職員の悲鳴と叱責の大声を聞くことになるのです。

世の中はたくさんの発明家がいるもので、先の調味料の小袋だけでなく、嗜好飲料にも小袋があります。紙コップに、小袋に入れたインスタントコーヒーと粉クリープ、砂糖、そしてスプーンまで用意されているセットがありますね。アウトドアや遠足などに便利。また、最近では旅館やホテルの宿泊室にも置いてありますね。

これで大丈夫と2回目のドリンク・バイキングをしましたが、またしても次々と小袋を破いてコップに入れているではないですか!

ある日コンビニで見つけました。たった一袋の中に適量のコーヒーとクリープと砂糖が一緒に入っている製品。いわゆる、オールインワンという製品です。必要なものがすべて最初から適量に入っているものです。早速、3回目のドリンク・バイキングです。

「1人1個、1人1個よ!」A職員の声が響き渡ります。1人1個、これなら判りやすい。子どもたちも迷わずに1個だけ手にしてコップに入れています。このドリンク・バイキングは子どもたちの大好きな企画になったことは言うまでもありません。

最近、パソコンも、必要なソフトが最初から全部入っているオールインワンが主流です。私たちも子どもたちと大して変わらないのかもしれませんね。(笑)

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第4話 グリコが命 100円で買える幸せ

待ってぇ〜、ボクの宝物!皆さんは、何かを手にしていると落ち着くということはありませんか?私が子どものころ、手のひらにクルミを2個持ってカリカリと摺りあわせていた大人がいました。NHKの大河ドラマ風林火山の中でも、武田信虎がクルミをカリカリしてましたね。それがあると心が落ち着くということ。私はイライラするとタバコに手が伸びてしまいます。

また、赤ちゃんがおしゃぶりをしたり、指を吸ったり、タオルケットを離せないのも、心の充足感と関係あるようです。楽しいことに夢中になっている子どもは指を吸いません。でも、それがなくなると指を吸いだします。

知的障害の子どもにも、いくつになっても指を吸う人がいます。実際、大人になっても指を吸っている人がいました。嫌なことや腹が立つことがあると、指だけでなく服や靴まで激しく吸い始めます。

指を吸うことで心の動揺が紛れ、落ち着くものと思われます。自分なりに見つけた解決法だと思います。だから大切にしてあげたいと私は思うのですが、それが理解できないA職員は「また指吸ってる。みっともないから止めなさい!」と声が大きくなってしまいます。

E君は多動です。多動の子どもは常に歩き回り落ち着きがなく、目を離すとどこかへ飛び出してしまうことがあります。施設の中だけなら探すのも容易で安全ですが、施設の外に行かれると、交通事故や危険な場所などがあって大変です。ですから職員はE君に振り回されっぱなしです。常に居場所を確認しながら仕事をしています。

ところが、このE君はグリコが大好き!それも、中のキャラメルではなく外側の箱が好き。しかも、箱の表ではなく裏の説明書きがお気に入りなのです。そこには「グリコが歯につきにくいやさしい噛み心地になりました・・・」と書かれています。この文字を眺めている時のE君は、それはそれは幸せそうな表情をして落ち着いています。職員が側で読んであげようものなら、キャーキャー歓声を挙げてはしゃぎます。そして、もっと読んでとせがみます。

ほかにも、コカコーラの缶や栄養飲料の瓶などがお気に入りです。いずれも説明書きの文章にうっとりしているのです。なぜそれが彼の心をとらえて離さないのか?私にはわかりません。ただ言えることは、それがあれば彼は一時の幸せを味わえると言うことです。

グリコもコカコーラも栄養飲料も、わずか百円前後で買えるものばかりです。それで幸せになれるのならと毎日買い与えていると、例のA職員が「無駄遣いばかりして困ります!」と私をにらみつけます。

F君は新聞折込の広告が宝です。それもカラー印刷の綺麗なものではなく、地元商店が出している黄色い紙に黒インクだけで印刷された安い広告が。これを4つにたたんで大事そうに持ち歩いています。しだいにボロボロになると、次の広告が欲しくて職員におねだりします。その際、ボロボロになった広告はポイッと捨ててしまいます。そして「またゴミにしている」とA職員に叱られています。

G君は常に草を指でこね回して幸せそうな顔をしています。他のものには興味ありません。前庭に飛び出して行っては、草を根ごと引きちぎってもどってきます。部屋の中でそれをこね回すものですから、部屋の中は草と土がいつも散乱しています。もちろんA職員の癇癪の原因になっています。

皆さんはどうですか?ちなみにA職員の幸せは高価な指輪や服を買うことだそうです。いつも自慢ばかりしています。しかし、百円のグリコも百万円の指輪も、その人にとって幸せな気持ちになれるのなら、どちらも大切な宝物ではないでしょうか?百万円の指輪が良くて、百円のグリコが無駄遣いだなんて、私にはとても思えません。(黙)

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第5話 百花繚乱 こだわりの花

カバンが、ないよう!知的障害や、特に自閉症の子どもたちの中には「こだわり」と言われる極めて強い固執性を呈する人たちがいます。私の父親もこだわりが強くて、出かける前の火の元点検は念には念を入れておこなっていました。そのため、なかなか出かけられなくて、子どもの私はイライラした記憶があります。私自身も若い時は、買った本に傷があると許せなくて、読まないうちから破り捨てて妻に呆れ顔されたことがあります。

私たちのこだわりは神経質と言われるものかもしれません。だから、誰もが呆れるけれど、納得できる理由はあります。それに対して知的障害や自閉症の子どもたちのこだわりは、一見理由がわからないものが多いため誤解されがちです。

例えばH君。食堂に入る時、入り口で必ず立ち止まってクルリと一回転するのです。それをしなければ食堂に入れないのです。ある時、職員皆で回転を阻止したことがあります。H君は気も狂わんばかりに大暴れして私たちを払いのけ、見事に一回転しました。そして、ハアハア言いながら食堂に入りました。

I君は職員室の決まった机の上に、決まった鞄が置いてないと気が済みません。職員がうっかり鞄を下に置こうものなら、職員室の窓越しに体をねじってもだえ、窓を手でガタガタとゆすって泣き声を挙げて訴えます。気が付いた職員が鞄を机の上に置くと、何事もなかったような顔に戻ります。

J君は洗濯物の干し方にこだわります。職員が干しても友達が干しても親が干しても、また自分の物だけでなく友達の洗濯物まで、必ず自分で干し直すのです。それも、とびっきり下手くそに干し直すのです。だから、皆はJ君に隠れて干すようになります。

この3人のこだわりは笑って済ますことができますが、A職員の逆鱗に触れるのは次のK君です。

K君は、トイレでトイレットペーパーを使いません。トイレが済むと友達の部屋へ行き、タンスを開けて、友達のシャツやパンツでお尻を拭くのです。そして、汚れたそのシャツやパンツはそのままタンスに戻すという、それはそれは迷惑なこだわりを見せます。

A職員はもちろん、友達からも、友達のご家族からも、非難の声が沸き起こります。これには困り果てました。K君のお母さんも、申し訳なさそうに頭を下げています。A職員の厳しい視線を私も避けるしかなかったですね。なんとか、お助けしたいと思うのは私だけではないでしょう。職員たちは何度も話し合って、必死に解決策を探ります。

さて、皆さんはどう思いますか?そうです、やはり過去に原因があると思います。何かのきっかけ、間違った学習や理解、または経験などが要因となって、激しいこだわりが生まれたと思われます。

こだわりは苦しいものです。本人にしかわからない苦しみがあります。そうしなければいられないという心の脅迫観念は、本当に苦しいものです。その苦しみが理解できずに「何をしてるの!」と、A職員のように一方的に叱るのは気の毒です。

ではどうしたら良いのか。こだわりは上手に修正すれば益となることがあります。服についたチリが気になって仕方のない子がいました。それではと、縫製されたタオルやカーテンの検品係りをしてもらったところ、実習先の職場で喜ばれたことがあります。どんなに小さなチリやゴミでも見逃さずに点検してくれるからです。

この修正は職員の使命です。こだわりを生かすのは職員次第です。こだわりを受け入れられない職員は、いつまでたっても子どもを救えません。

ところで、子どもたちのやることなすことに、いちいち目くじらを立てるA職員こそ、強いこだわりの持ち主ではないでしょうか?(笑)

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第6話 ラジカセが友達 クルクルまわれ

あ〜、クルクルしたい!知的障害や自閉症の子どもたちで、ラジオカセットが大好きな人が結構たくさんいます。それは、音楽が好きということもありますが、それだけではない深い意味があるのです。

もともとはラジオカセットではなくレコードプレーヤーでした。LP盤をセットして針を乗せるとレコードがクルクル回ります。実は、このクルクルが発端なのです。

知的障害、特に自閉症の子どもさんには、クルクル回るものが大好きな子がいます。レコードプレーヤーの他には、車椅子のタイヤ、洗濯機、乾燥機、電子レンジ、扇風機などなど。おもちゃの自動車のタイヤを指ではじいてクルクル回して、日がな1日眺めている子がいます。洗濯機に顔を突っ込んで悦に入っている子どももいます。誰も乗っていない車椅子を倒してタイヤを回している子もいます。

なぜ、クルクル回るのが好きなのでしょう?回転とは半永久運動であり、出発点と到着点が一緒です。つまり、動き出したらどこかへ行ってしまうものではありません。必ずここにとどまり、そして同じ動きを繰り返すものです。

この同じ動きを繰り返すということが重要なのです。つまり、「回転は僕を裏切らない」と言うことです。予測不能な動きではない、予測可能な動きなのです。それが、行動予測不安の強い自閉症の子どもには、逆に落ち着けるアイテムになることがあります。

行動予測不安とは、自分は今から何をするのか、何をさせられるのか、どうなるのか、といった、これからの自分の行動の見通しを立てるのが苦手なことを言います。だから不安になり、自分の理解できる行動に固執すると言うのが私の持論です。
 
前話でも紹介しましたが、こだわりもその一つですね。食堂に入る前に1回転したり、出かける前に指を鳴らしたり、歩き出す前に必ず1歩後に下がったりなど、いろいろなこだわり行動があります。

レコードプレーヤーがラジオカセットになり、今ではCDです。回転の様子は次第に目に見えにくくなってきました。それでもやはり大好きです。
 
それはもう一つの意味があるからです。つまり、これらの音楽再生機器も「僕を裏切らない」からです。再生ボタンを押せば必ず予期した音楽が流れてくれる。停止ボタンを押せば必ず静かになってくれる。ここにも行動予測不安から来る、逆の心理が働いています。
 
そして、さらにもう一つの意味。それは、一つの曲が3分程度で終わるということです。昔の歌謡曲は1曲3分というのが定番でした。子どもたちにとっては3分が集中できる、ちょうど良い時間なのです。さらに昔の歌謡曲は曲の作りが簡単で、A→A→B→Aというメロディーの繰り返しが明確でした。これも「僕を裏切らない」ものなのです。
 
ところが最近の曲は5分6分は当たり前。さらには曲の作りも途中で変調したりと難しい。題名や歌詞も外国語が多くてさっぱりわからない。歌手の名前さえ横文字ばかり。子どもだけでなく、私も最近は着いていけません。カラオケへ行けば歌うのはナツメロばかりです。
 
大人の知的障害の方に訊くと、好きな歌手や曲は横文字が台頭する以前の時代で止まっているようです。山口百恵、桜田淳子、せいぜい小泉今日子、松田聖子あたりまででしょうか。
 
自分が知っていて安心できる行動が、自分が望む通りに動いてくれること、これが重要なのです。
 
子どもたちが恐れるA職員は、いつ怒り出すかわかりません。また怒り出したら、いつ静かになるかもわかりません。だから子どもたちにとってA職員は、それはそれはいまわしい行動予測不安な存在なのかもしれませんね。(笑)

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第7話 自由時間 悪魔の時間

することがないの・・・皆さんは、待ちに待った休みの日は、どのように過されていますか?お父さんなら、パチンコ、競輪、競馬?お母さんなら、お友だちとの外食、デパートでのショッピング?若い人だったら、映画、旅行、デート?いずれにしても、予定がいっぱいあって忙しいことと思います。私は、もっぱら庭仕事と山歩きですね。

軽度の知的障害の子どもさんも、自分の楽しみを持っていて、土日や祝日は楽しみにしています。なにせ嫌な訓練や勉強をしなくていいのですから、このあたりは普通の子どもさんと何ら変わりません。しかし、中度・重度と言われる子どもたちになると、そうはいかないようです。
 
どこの施設でも、たいてい平日の午前中は訓練や勉強をしています。午後は入浴や散歩などの日課になります。訓練や勉強は、確かに子どもたちの力を伸ばすために行うものですが、それ以外に、もうひとつの理由があるのをご存知ですか?それは「子どもたちは、自由時間を上手に使うことが苦手だから」ということです。
 
それはどういうことか。つまり、中度・重度と言われる子どもたちの多くが、趣味を持っていないからです。だから自由時間に何をして良いのかわからないのです。そのために、せめて平日だけでもと訓練や勉強をするのです。しかし、土日祝日には訓練や勉強はありません。一日中、自由時間です。平日でも日課の合間や食事後の休憩時間、これも自由時間です。
 
私は知的障害の仕事の他に、高齢者介護のためのホームヘルパー養成講座の講師もしています。その中でレクリエーション体験学習というのがあります。私はいつも次の話しをします。
 
お年寄りを邪魔物扱いにしているお嫁さんがいます。おばあちゃんは台所仕事をしたいのですが、お茶碗を落として割ったり、煮物を焦げつかせてしまったりと、失敗ばかりしています。見かねたお嫁さんが「お義母さん、もう何もしないでいいから、ここに座ってお茶でも飲んでいてくださいね」と、陽の当る縁側に追いやります。かくして、何もすることがなくなったおばあちゃんは、一気に認知症になっていきます。
 
皆さんもやってみてください。コーヒーを一杯横に置いて、1日何もしないで縁側に座ってみてください。のんびりできるのは最初の一時間だけですよ。やがて飽きて面白くなくなり、ため息が出始めると、そろそろ限界ですね。イライラして腹が立ってきます。
 
知的障害の子どもたちもイライラします。それを解決するために、指を吸ったりします。また、壁の一点を爪でガリガリと引っ掻いて穴をあけたり、フローリングの端をバリバリと剥がしたりします。
 
それすらもできないと、さらにイライラしてきて友達と喧嘩したり、小さな失敗を繰り返して大怪我をしたりします。だから、そうならないように何かすることを提供するのが、施設の訓練であり勉強であり日課なのです。その内容がいかに充実しているかどうかで、子どもたちの午後の過し方にも影響してきます。
 
でも、これでは本当の解決にはなりません。大切なのは子どもさんが自分自身で自由時間を楽しめるようにしてあげることです。そのため、私たちは「好みの発見」に努めます。いろいろな情報を提供して、子どもたち一人ひとりにあった楽しみ方を一緒に探すのです。
 
これが理解できないA職員は「ああ、はやく休憩時間にならないかしら」と愚痴ります。休憩時間は子どもたちにとっては悪魔の時間です。あっちでもこっちでも、子どもたちの悲鳴が聞かれます。
 
だから、休憩時間の方がトラブルが多くて、忙しいくらいです。その中で、子どもたちを無視して満足そうにお茶を飲んでいるA職員は、実は大物なのかもしれませんね。困ったものです。(笑)

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第8話 箒でホッケー お掃除が苦手

さぁ終わった、帰ろう!私はたくさんの施設を見て回りましたが、どこの施設でも食事は食堂に集まって食べていました。これがまことに、にぎやかなのです。

静かに食べている子どもの横で、歓声や悲鳴を上げている子。友達のおかずに手を伸ばそうとして職員に叱られている子。嫌いなおかずを床に落としている子。お茶碗をひっくり返して泣いている子。おかずを全部混ぜてスプーンでこね回して遊んでいる子。実に様々です。
 
その子どもたち一人ひとりに目配りしながら、食事のお世話をしている職員の顔は、真剣そのもの。全力投球です。施設での重労働と言えば、「食事と入浴と排泄」と言われるゆえんです。
 
さて、私がいた施設では、食事の後は利用者による食堂掃除がありました。比較的軽度と言われる利用者が選ばれて、椅子をテーブルの上に乗せて、床を掃いて、モップで拭くというものです。私たちも昔、小学校でしていた掃除当番と同じですね。
 
施設では、これも自立訓練の一環として行われます。将来、就職先で掃除を任されることが予想されます。その時になって慌てないように、今のうちに訓練しておくのです。掃除は基本的生活習慣の一つにもなっています。自立するためには必要不可欠なものです。
 
それにしても施設での食事の後というものは、それはそれはすさまじいものです。前述したように、とにかくこぼしが多いのです。特に粘り気のある御飯粒と汁物の始末が大変です。
 
さて、掃除当番のニューフェースのL君は、どうしていいかわかりません。あの怖いA職員から突然「今日から掃除当番頼むね」と言われたからには、逃げ出すわけにもいかず呆然としています。知的障害の子どもさんは、新しいことや未体験なことをするのが苦手です。
 
そうしているうちに、他の友達がテキパキと椅子をテーブルの上に乗せています。そして箒を持ち出してきました。L君も仕方なしに箒を持ってきます。箒なんて生まれて始めて持ちます。どうしたら良いのか、友達の様子を黙って見ています。
 
なんとなく理解できたのか、箒を動かし始めます。床にはたくさんのゴミ。とにかく箒を動かせばゴミは移動してくれます。面白くなってきたのか、しきりに箒を動かしますが、ゴミは右に左に行ったり来たりするだけ。掃除どころか、かえって散らかしているように見えます。
 
それを見ていたA職員「なんて下手なの?こう動かすのよ!」と大きな声が飛びます。L君、もういつ泣き出してもおかしくありません。頭の中はパニックです。
 
さてさて、これではいつまでたってもL君は叱られてばかり。それではと、ある日のレクリエーションの集いに私は提案しました。「皆で箒でホッケーをしよう!」
 
ホールに皆を集めて2グループに分けます。ホールの両端に机を一つ置いてゴールとし、キーパーを1人配置します。全員に箒を持たせ、新聞紙を丸めたボールを真ん中に置きます。後は笛を吹いてゲーム開始。全員、目を輝かせて箒でボールを叩きます。
 
これは実に楽しい。箒をどう動かせばボールが思い通りの方向に飛んでいくか、みんな真剣です。掃除訓練の時にゴミを上手に運べずに叱られていたL君も、ホッケーがめきめき上達してきました。もちろん、食堂掃除も上手になりましたよ。
 
知的障害の子どもたちに教える時に大切なのは、教え込もうとするのではなく、自分で気づくように導くことです。自分で「あ〜、そうなんだ」と気づいたことは身につきます。
 
自分が子どもたちに恐れられていることに気づいていないA職員は、今日もまた自分のことを棚に上げて吠えまくっています。はてさて、どうしたら良いのか。頭が痛い毎日です。(笑)

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第9話 ゴミは宝 コレクションと収集癖

ボクはゴミの収集家あなたの趣味は何ですか? 趣味には二通りあるようで、体を使う行動的な趣味と、頭を使う頭脳的な趣味があります。行動的な趣味としては、テニスやゴルフと言ったスポーツ系が代表でしょう。頭脳的な趣味としては、パズルとか音楽鑑賞などが代表格かな。私の趣味は、妻と行く山登りと温泉巡りですね。これは行動的な趣味です。
 
さて、頭脳的な趣味にコレクションがあります。テレビの人気番組に、骨董品を鑑定する番組がありますね。あの中で、良くコレクターが出てきます。ポスターばかりを集めている人、ミニカーばかりを集めている人など、実に様々です。興味のない人にとってはただのガラクタが、本人にとっては大切な宝なのです。それを理解できない家族からは、じゃまだと非難されるのも定番ですね。
 
Mくんも一人前のコレクターです。彼が集めるのはパンフレットやチラシです。これらは施設の中では手に入りません。もっぱら、外出した時に集めまくるのです。動物園に行けば動物園のパンフレット、映画を見に行けば映画のパンフレットといった具合です。
 
行った先の思い出に買い集めることは私たちも良くします。旅先で買う絵葉書が良い例ですね。後から、それを眺めて思い出にひたるのは酒の肴にぴったりです。これなら誰でも理解できます。
 
ちょっと理解できないのは、お店に置いてあるチラシを集めることです。書かれてある内容は関係ありません。とにかく何でもかんでもポケットに押し込みます。それも、あればあるだけ掴み取ってきます。カラオケ店の割引券、結婚相談所の申し込み、クレジットカードの加入申し込み書、女性下着のカタログ、何でもかんでもです。
 
だから彼の部屋は、そういったものが山積みです。その中に埋もれてうっとりしています。彼にとっては宝の山なのです。ところが、それが理解できないA職員にとってはゴミの山。どうなるのか想像つきますね。そうです、A職員によってM君の宝は捨てられてしまいます。
 
皆さんはどう思いますか?男の子が女性下着のカタログを眺めていれば、女性職員としては「いやらしい!」の一言でしょうね。しかし、本人にとっては書かれている女性の下着に興味があるわけではないのです。
 
そのカタログを手に入れた時の状況が大事なのです。どこそこに行った時の大切な思い出がこめられているのです。カタログを見て頭に浮かべているのは女性の下着ではなく、店の前を歩いている自分なのです。あなたには理解できますか?
 
さて、私にも理解できない子がいます。N君はゴミ捨て場から次々とゴミを集めてきます。使い捨てられた乾電池ばかりを袋一杯に集めてきたり、トイレットペーパーの芯ばかりを集めてきたり、ネジや釘ばかりを箱一杯に集めてきたり、といった具合です。
 
これはM君のコレクションとは、ちょっと違いますね。目的もテーマもはっきりしません。ただ集めているだけです。これはコレクションとは言いません。収集癖と言います。
 
いずれにしても、ゴミに埋もれてうっとりしている姿には違和感があります。一般の方には「何してるんだろう?」と不思議がられます。「みっともないから恥ずかしい」と心配する親御さんもいます。

いったい何故、ゴミを集めるのでしょうか?それは、自分は他の子よりもたくさんのおもちゃを持っていると言う優越感と充足感にひたっていられるからです。ゴミに埋もれていると心が落ち着くのかもしれませんね。
 
反対に落ち着かないのはA職員です。今日もまたA職員の金切り声が聞かれます。「お部屋をゴミだらけにしてぇ!」と。(笑)

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第10話 言葉は嫌い サイン言語

あの子、わかんな〜い私がいた施設では、利用者が25人単位で一つのユニットを形成しています。つまり職員5〜8人が、交代勤務で25人の生活のすべてを支援するのです。
 
25人いますが、しゃべれるのは5人ほどで、あとの方はしゃべることができません。しゃべることができないのにも二通りあるようです。頭の中では言葉で考えられるのですが、声に出して言うことができない人。頭の中でも言葉がなくて感情だけで生活していると思われる人、の二通りです。
 
学者さんによると、頭の中で使われている言葉が内言語、声に出して使われている言葉が外言語だそうです。内言語に外言語。う〜む、なかなか難しいですね。
 
25人の中で一番多いのが、内言語はあるのだが外言語が不自由な人です。しゃべる時は「あ〜」とか「う〜」とか言って一生懸命です。私たち職員は24時間毎日お世話をしていますから、言葉がなくても、その時の表情や状況から、何を考え何を求めているのかが、自然とわかるようになります。
 
母親が乳飲み子の表情一つで、「おなかが空いているのね」とか「おしっこしたの?」とわかるのと同じかもしれません。これはノンバーバルコミュニケーションと言って、言語を使わずに意思疎通を行う方法です。
 さて、O君は自閉症の知的障害です。自閉症の3つの認定基準をすべて持っています。つまり、強いこだわりがあり、言葉が苦手で、人間関係を嫌がります。
 
ある時、A職員が大きな声でO君に言いました。「御飯だから手を洗いなさい」と。すると、O君は両耳を両手で塞いで興奮しだしました。A職員のさらなる声掛けです。「どうしたの、早くおいで」と。決して怒って言っているわけではありません。ただ、ちょっと声が大きかったのです。O君はついに自分の右手の甲を噛みだしました。もうパニック状態です。他の職員がO君を止めに入り、気を落ち着かせるために2人で散歩に出かけました。それを見たA職員は「まったく、あの子は何なんだろうね。私は何も悪いこと言ってないのに」と不満顔です。
 
さて、皆さんはどう思われましたか。実はO君は言葉が理解できません。大きな声で何か言われると、まるで外国語で怒鳴られているように感じるのです。ですから言葉が理解できない不安と、叱られているという誤解が、O君を興奮させているのです。パニックは一つの自己防衛反応とも言われています。
 
では、どうしたら良いのでしょう。自閉症の子どもさんは言葉は苦手でも、視覚的な認知力は素晴らしいものがあります。耳で聞く言葉ではなく、目で見る視覚的なコミュニケーションの方法を提供することが大切です。
 
第6話でも紹介したように、自閉症の子どもさんは行動予測不安が強いので、一日の行動や日課をそれぞれ一枚の絵や写真のカードにして、そのつど見てもらうと納得します。TEEACH(ティーチ)と言う新しい療法がこの絵カードを使用しています。
 
また、サイン言語という知的障害者向けのジェスチャーのような手話も有効です。「始める」は両の掌を本を開くように動かして知らせます。「おしまい」は両の掌を水平に打ち合わせます。
 
O君は嫌なことがあると、この「おしまい」のサインを繰り返し職員に見せにきます。「もう嫌だよ。終わろうよ」と言っているのです。だから、A職員に対して「おしまい」サインを出すことが一番多いようです。もちろん、「僕、A先生は嫌だよ」と言っているのです。う〜ん、同感です。私もA職員に「おしまい」のサインを出しますか。(笑)


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